児美川 孝一郎 教授

PROFESSOR KOMIKAWA KOICHIRO

わたしたちは、児美川教授のキャリア教育・キャリアデザイニングの考え方、教育学(青年期教育・キャリア教育)研究の視座を基礎として、ひとりひとりの自覚的なライフキャリア形成を支援することを目的に活動しています。

 

児美川教授の考え方を知ることが、キャリア教育に対する正しい知識や実態、さまざまな考え方、さらに”生きる力”を育むヒントにもつながると思っています。以下は、当協会の活動に関する児美川教授の著書や記事(一部抜粋)です。

“学校教育の外側での活動”に期待を寄せて

グローバル化や情報化の進展、「知識基盤社会」の到来といった社会変化を前提に、今、世界の国々は21世紀型の社会で活躍することのできる人材の育成とそのための教育改革に躍起になっています。

 

もちろん日本も例外ではなく、政府・文部科学省は矢継ぎ早に学制改革や入試制度改革の構想を打ち出し、学習指導要領の改訂にも取り組んでいます。そうした人材育成の土台に座るのが、学校教育におけるキャリア教育の推進です。

 

しかし21世紀の社会を生きぬく人材の育成は、学校教育のみで完結できるものではありません。

家庭の子育てや教育、地域での取りくみ、社会人を対象とした研修や教育、企業内の教育訓練などを含んだ「生涯学習社会」全体が担っていくべきものです。教育機関以外の組織や団体による取り組みも重要な役割を担います。

 

そうした意味で,教育機関との連携もはかりつつ、学校教育の外側においてキャリア教育やキャリア支援の普及に努め、そのための学習や研修の機会を提供しようとする一般社団法人日本キャリアパスポート協会の活動には大きな期待を寄せています。         

2016.9.23 児美川孝一郎

キャリア教育に関する考え方

キャリア教育とはなんでしょうか?

ひと言で言えば「人生への準備教育」ということです。

 

キャリア教育は学校が取り組むべき課題のひとつですが、導入のきっかけがニート・フリーターや早期離職など若者の雇用問題の解決にあったため、キャリア教育がもっぱら「就労への準備教育」として理解され、本来の意味が誤解されてしまったという背景があります。

 

いまは、「倒産やリストラに遭うかもしれない」「社会の仕組みも激しく変わる」時代です。どう人生を歩むかを自分で考え、動かなければなりません。そのための教育が必要で、人生をどう歩むかの『構え』をつくらせることがキャリア教育のいちばんの目的です。

 

「キャリア教育」と聞くと職場体験を思い浮かべる方が多いと思いますが、すべてが職場である必要はありません。地域の課題を考えたり、フィールドワークをしたり、近所で暮らす普通の人の話を聞いたり…。その中で「社会に出たらこうなるんだ」と気付くことだけでも十分に大人になるための準備になります。子どもたちには、具体的な職業名でなくていいので、「なぜ働くのか」「何を実現したいのか」を考えてほしいのです。

 

キャリア教育は、じつは家庭が出発点です。社会のことを教えるのに、学校の中だけでやっているのでは意味がありません。

例えば、子どもがある程度大きくなったら、「毎朝新聞を取りにいく」などの役割を家庭の中で与え、「僕が(わたしが)やらないと家族が困るんだ」という感覚を身に付けてもらう。自身の役割を果たすことは会社の中でも同じです。また、できる範囲で子どもにお金の話をするのもいいことです。

 

学校では、キャリア教育という言葉を使わなかっただけで、以前から生徒指導や特別活動を通じて、これに近いことをやってきました。しかし、仕事だけに偏り、狭すぎるという側面もありました。そのあたりを見直したうえで、キャリア教育を学校の中につくることがとても大事なことだと思っています。

児美川孝一郎「仕事への偏り 見直す時」高知新聞2014.11.30付より要約。 文責:野浪


発達段階に合わせたキャリア教育のあり方(協会より)

児美川教授の“キャリア教育に対する考え方”は、『キャリア教育のウソ』(2013年 ちくまプリマー新書)をはじめ、複数の著書や記事にわたって書かれています。キャリア教育は小学校から大学まで幅広い年齢を対象にしたものであり、それぞれの発達段階に合わせた”あり方・考え方”があります。上記の高知新聞に掲載された考え方は、主に「小中学生の保護者向け」に書かれた内容といえるでしょう。

 

保護者のみなさん、小・中・高・大学等をはじめとする教育機関のキャリア支援者、若年者のキャリア支援をされている方々など、さまざまな立場の方が「キャリア教育とはなんだろう?」「自分になにができるか(自分の役割を考える)」という問いを持たれているのではないでしょうか。それぞれの立場からの問いに、どの著書や記事が最適なのかについては、ぜひ「児美川教授の著書・記事の紹介」ページをご参照ください。

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